2.江戸時代の走り方について
(5)「千里善走法」にある動きの推定
不及先生 千里善走法[12]にあるそれぞれの走り方について、
推定した江戸時代の走り方をベースに、以下の様だったのではないかと推定しています。
基本の三法
(写真をクリックすると、再現動画)
真 | 草(江戸時代の普通の歩き方)をベースに 爪先が重心真下の地面についた直後、踵を地面に着ける。 すると、かかとが重心のずっと後ろに着地するので、前に倒れる力が増し、体が加速する。 左右の足(かかと)に体重をかける比率は五分五分、同じだけ体重をかける |
---|---|
行 | 左右の足にかかる体重を四分六分、あるいは六分四分にすることで、 片方の足を休めながら走る 四分の足は負担が減るので、片足を痛めたときでも走り続けられる ギャロップのような走り方 |
草 | 江戸時代の普通の歩き方 爪先で重心真下に着地することで、体が自然に前に倒れて進む 着物でも裾がはだけないので、普段の恰好からでも走れる |
七体
第一 頭を以て歩く | 頭上に心を置き、頭を前に突き出して走る 重心が前に出るので、速度が上がる |
---|---|
第二 胸で歩く | 胸を前に突き出すつもりで走る 顔が正面を向くので、視野が広い |
第三 真の歩き方 | 三法の真に同じ |
第四 右の六分 | 行の歩きで右足六分、左足四分で体重をかける 左足への負荷が減るので、左足を痛めたときに有効 この走り方は、右の半身になる |
第五 左の六分 | 行の歩きで右足四分、左足六分で体重をかける 右足への負荷が減るので、右足を痛めたときに有効 この走り方は左の半身になるので 左腰に脇差を差したときは、刀が揺れず走りやすい (肩衣袴穿之節運歩之法) |
第六 右の手 | 右手を前にして振る走り方 右の方に走りやすい走り方なので ・右折するとき ・道路の左側のような 地面の右側が高く左側が低いところを走る ときに有効 |
第七 左の手 | 左手を前にして振る走り方 左の方に走りやすい走り方なので ・左折するとき ・道路の右側のような 地面の左側が高く右側が低いところを走る ときに有効 |
文献に残る内容と矛盾していないと考えていますが、いかがでしょうか。
参考文献
[12]早川純三郎編「雑芸叢書第二」p415-420「不及先生 千里善走伝」より
図書刊行会 大正4年刊(国会図書館デジタルコレクションより)