2.江戸時代の走り方について
(4)文献から推定する江戸時代の走り方
*注意*
ここでご紹介します走り方を試される場合は、
最初は短い距離から始めていただき、
徐々に長い距離を走られることをお勧めします。
普段お使いの筋肉と違う部位を使う場合もありますので、
急激に負荷がかかると足を痛める恐れがあります。
先に推定した江戸時代の歩き方、
忍者の訓練法、千里善歩行術、神足歩行術、
および浮世絵に残る飛脚の絵をもとに、
裸足ランニングの経験も踏まえ実際に走りながらその動きを検証した結果、
江戸時代の走り方は上記のようなものではないかと推定しています。
一 膝を曲げて爪先を体の真下に着地
江戸時代の歩き方(推定)と同様に、
浮世絵の飛脚のように爪先を体の真下に着地すると、
重力で体が自然に前に倒れ、
力を入れなくても楽に前進できます。
ももを上げずに素早く地面を踏むのを心がけるとスムーズ。
・体の真下に足を下ろそうとすると、
かかと着地より爪先着地の方が楽です。
・爪先から着地することで、足のアーチがクッションになって
膝への衝撃を吸収してくれます。
・着地位置を重心よりも前にすると、後ろに倒れる力が働き、ブレーキがかかります。
・重心真下に爪先が着地した直後に足首を緩め、かかとを地面に着けると、
前に倒れる力がより強く働き、スピードが上がります。
千里善走法の「真」が、この走りになると考えています。
その時、神足歩行術の「小股・小刻み」になり、
ピッチは240~300歩/分ほどになります。
なお、足が体の前に動くとき、
股関節から外旋して膝を軽く(5~20度くらい)外に向けた方が、
股関節付近の詰まりが無く、ももの力が抜けて楽に膝が上がります。
足が後ろに動くときは、股関節から内旋して膝を正面に戻した方が楽に動きます。
二 全身の力を抜いて
神足歩行術にありますように、全身の力を抜いて
重力で体が倒れて自然に前に進むのに任せることで
楽に走ることが出来ます。
体に力が入ると、かえってブレーキになります。
転んで倒れない最低限の力で、
全身のどこにも緊張感の無い状態が理想です。
足も、筋力でガツガツ走る、というよりは、
体が勝手に前に転ぶから足が前に出る、という感じです。
三 地面から引き抜くように後ろ足を上げる。
足を地面から離すときは、力を抜いて地面から引き抜くように上げます。
力を入れなくても、着地時の筋肉反射で足がバネの様に跳ね上がりますので、
それに委ねてください。
四 腕は足と同じ側を外・内旋
体のバランスをとるために、腕は足と同じ側を外・内旋します。
・足が外旋しながら前に上がるのに合わせて、同じ側の腕も外旋します。
その時、肩甲骨は体の中心に寄り、
ひじは軽く曲がり、
手のひらは軽く上を向きます。
・足が内旋しながら後ろに下がるのに合わせて、同じ側の腕も内旋します。
その時、肩甲骨は体の外側に寄り、
ひじは伸ばし気味になり、
手のひらは体側~後ろ側を向きます。
五 視線は1メートル先の地面を見る
神足歩行術では、
「山登りの時は足先三尺(約90cm)を見つめて歩く。」
とあります。
また、忍者の走り方について「どろんろん」には
「力低(りきてい)にて歩く。」とあります
(力低・・・紙を八折りにしたものを奥歯に挟み、自分の足元を見ながら小刻みに歩く。)
当時の道路は舗装されていないので、雨が降ればすぐぬかるんだでしょうし、
ウサギの穴や木の根など、足元に何があるか分からない道も多かったものと思います。
そのため、次の一歩をどこに置くか、
足元を常に確認して走っていたものと推測します。
そして、足元を見るようにすると、体の重心が前に傾きます。
これも楽に速く走るには大切なことであったと思われます。